教えて!日食さん!


 オートミールがどこで、どんな風に作られているかご存知ですか? 輸入品のイメージが強いオートミールですが、実は国内でも生産されています。 私は、唯一の国内産オートミール、「日食ロールドオーツ」を製造している 「日本食品製造合資会社」通称「日食」の工場を訪ね、北の大地!北海道、由仁町へむかいました。

 この「日食ロールドオーツ」は私が日本で初めて食べ、そのあまりの美味しさに感動し、毎日食べるようになった、私に取っても思い入れの深い一品です。今回は、日食オートミールの歴史や、こだわり、そして美味しさのヒミツを日食の代表社員であり、日食創設者の孫にあたる、戸部 謙ルイス社長に教えていただきました。

戸部 謙 ルイス 社長

日食オートミールの歴史

     〜北海道の農業と共にあった日食

工場の近くにある 日食が作物の研究をおこなっている畑

 もともと燕麦は、農作業に使う馬や牛の飼料として、あちこちの農家で栽培されていました。現在のようなエンジン付きの農機具が主流となる以前は、家畜による力が農作業における最も重要な動力だったため、エンバクは今で言うガソリンのような存在だったそうです。

 明治初期、北海道にアメリカ式の農業が導入され、とうもろこし、にんじん、じゃがいもなどの本土ではまだあまり見られなかった野菜が初めて栽培されるようになりました。それにより、北海道の第一次産業は大きく発展しますが、当時の輸送技術では鮮度を保つことが難しく、物流には加工が不可欠でした。そこで日食の創設者、戸部佶さんはこれらの加工技術を学ぶため、アメリカ、カリフォルニア州へ渡りました。サンホゼにあるデルモンテの工場に数ヶ月間滞在し、コーンの缶詰と、ちょうどその頃人気を博していたケロッグ初の「コーンフレーク」の加工技術を学んだ戸部佶さんは、帰国後は北海道でこの二つの加工食品の製造を決意したのでした。

 その後、ヨーロッパを目指してアメリカを縦断していく道のり、カナダとの国境付近で質素な生活を営むQuakerの人々を目にします。当時北海道では飼料として栽培されていたエンバクが、栄養のある主食として食べられているということを知った戸部佶さんは、帰国後トウモロコシとともにエンバクの加工にも着手し、コーンフレーク、オートミールの製造を日本で初めて行いました。

 ヨーロッパに渡った戸部佶さんは、シルクハットにステッキ姿のイギリス人の紳士的な思考や立ち振る舞いに感銘を受け、この紳士の姿を会社の社票に決め、ジェントルマンズブランドを立ち上げたそうです。こうして、旅で習得した技術の中から、北海道でもその力を発揮できる、缶詰、コーンフレーク、オートミールという三つの加工製品を日本で製造するに至ったのでした。日食のオートミールが素敵な缶に入っているのは、もともと缶詰屋さんから始まっているという背景があったのです。

創設者の戸部佶さんは、紳士たる者の思考、行動、振舞を会社のあるべき姿とし、
ジェントルマン・ブランドを日食の商標とした

日食オートミールのこだわり

     〜自然の良さを引き出す工夫

     日食の理念
自然の素材がもっている味、栄養、良さを生かした食品作りをめざし、皆さまの健康的な食生活に貢献します。オートミール、シリアル、スイートコーンなどの製造工程には添加物などを一切使用しないで製造する事ができます。穀類や野菜の持つ自然の良さを最大限に引き出すには、必要最低限の加工をする事が最適であると日食は考えます。自社製品はこの理念のもとに製造をしております。(日食公式HPより)

 この理念に基づき、日食では「必要最低限の加工」を施す為の工夫や努力がたくさんありました。 まず、日食で扱っているエンバクは、どれも100%トレースが可能で、特に「日食ロールドオーツ」で使われている北海道さんのエンバクに関しては、工場のある周辺の農家で作られている為、全員が顔見知りだそうです。全く信頼のおける生産者だからこそ、できるだけ無駄な加工をせず、素材そのままお届けできるのだそうです。

 また、日食は日本で唯一の有機JAS認定されているシリアル工場で、除虫剤を使わず、工場内の燻煙も、除虫菊由来のもののみを使用しているそう。機械は従業員の方々が毎日水のみで手洗いしています。見学をさせて頂いたのは、ちょうど二ヶ月に一度の、製造ラインを分解して隅々まできれいに洗浄する日で、実際に作業員のみな様の手で丁寧に洗浄されているラインを見て、本当に赤ちゃんからお年寄りまで安心して食べられる食品なのだということが良く分かりました!

     〜シンプルが故の難しさ!

シンプルさが魅力の日食のオートミールですが、シンプルだからこその苦労もたくさんあるそうです。 まず、原材料が燕麦100%なため、作物の産地や品種で味が大きく変わります。加工で調整することも可能ですが、日食ではあえてそれをせず、それぞれの材料が持つ美味しさを生かすという選択をしています。しかし、一定の味を求める傾向のある消費者からは理解を得るのは難しく、クレームになりやすいとのことでした。また、日食では、除草剤、除虫剤を使っていないため、どうしても他の植物の種や虫が入ってしまう確率が高くなってしまいます。そのため、日食でも異物除去はいくつもの工程を通して念入りに行われていました。

見せていただいた燕麦。まだ穂が付いていないので、他の植物と見分けるのは難しい

  今大変大問題となっている異物混入ですが、目に見える異物よりも、完璧に異物をとり覗くために薬品を使う事の方が、はるかに恐ろしいのではないかと感じました。しかし、このような感覚は普段都会で生活している消費者にはなかなか伝わらないもので、それが生産者側の悩みでもあるといいます。消費者は、混入物は目に見えるものだけではないということをしっかりと理解し、本当に安全なものを選ぶことが大切です。

日食オートミールの特徴

     〜おいしさの3つの理由!?

1)最適加工:加工の全行程を日食の工場内で行う事ができるので、籾殻の状態で仕入れたものは、ぬかの残し具合からカットの粗さまで、微調整が可能です。それぞれの原材料の最も適した加工を見極めることによって、それぞれの素材が持つ良さを最大限に引き出しています。

2)焙煎:甘さ、香ばしさ、とろみをつけるために軽く焙煎をしています。焙煎すると、水分量が14〜15%→12〜13%に減ってしまい、重量が軽くなってしまうため、これを行っている製品は少ないのだとか。これにより、和風の味付けにもぴったりと合う、日本人に食べやすいオートミールになっています。

3)食感:日食のオートミールの最大の特徴は、トロトロとした食感です。スープなどに入れるとトロッとするのは、粒の大きさがそろっているためだそう。4メッシュの穴を全ての粒が通るように揃えているそうです。

日食オートミール工場見学!

 ここで黒瀬 元博工場長にバトンタッチ!工場内を案内していただきました。

小学校の旧校舎を利用した工場は、懐かしい風景とオートミールの優しい香りで溢れていた

     〜オートミールができるまで

(※工場内は写真が撮れなかったので、以下のイラストは私の拙い記憶を元に書いたイメージイラストです。)

 

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